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コンポーネント4:パイロットプロジェクトの実施


イラク南部湿原地帯に住む人々の生活を再建していくためには、飲料水と衛生設備の供給、および湿原の環境再生を優先して行っていく必要があります。同地帯の環境、社会文化、経済的条件を考えると、そうした取組みは環境に適正でしかも地元での受容性が高いものでなくてはなりません。例えば、土壌に多量の塩分が含まれているため、再冠水した一部地域の水は高い塩分濃度を示しています。そのため既存の水処理技術の適用は難しく、飲料水として利用することが困難です。

本プロジェクトでは、環境に適正であると考えられる飲料水、衛生設備、湿原管理に関する技術的オプション(EST)を特定し、試験的に実施しました。イラクの関係省庁やマーシュ・アラブ・フォーラムが挙げた18の候補の中から、6つのコミュニティがパイロットプロジェクト実施地区として選ばれました。コミュニティの選択は、技術的な基準、地理的分布に基づき、最終的に2005年2月にヨルダンのアンマンで開かれたパイロットプロジェクトの実施に関する技術会議でのイラク側の関係者の合意を得て行われました。


飲料水の供給

飲料水の供給に関するパイロットプロジェクトは、ジカール、ミサーン、バスラの6つのコミュニティ(アル・キルマシーヤ、バディール・アル・ルメイドウ、アル・メサハブ、アル・ジュウェベル、アル・ハダム、アル・セウェルマット)で行われました(地図を参照)。ESTには低圧逆浸透膜技術が選ばれ、5つのコミュニティにパッケージ型浄水装置が設置されました。残った1つのコミュニティでは、従来型の沈殿−濾過技術を用いた小型処理装置が再生利用され、水の処理が行われました。今ではコミュニティの住民は道路沿いに設置された共同給水栓から定期的に水を汲むことができるようになりました。完成した施設は、約22,000人の住民に飲料水を供給することが可能です。また、各コミュニティから選ばれたオペレータの研修も併せて行われ、2006年4月から2007年4月にかけて運転・メンテナンスに関する支援活動を行いました。2007年6月にはイラク地方自治公共事業省(MMPW)と各州の水資源局に施設の所有権と管理が譲渡されました。現在、こうした飲料水施設はすべてイラク側が所有し、管理を行っています。


衛生設備の提供

ジカール州アル・チベイシュの小さなコミュニティでデモ用の衛生・排水処理システムが導入されました。「人工湿地」と呼ばれるESTを用いたこの施設は2006年12月末に完成し、居住地近くの水路に垂れ流された未処理の排水により健康被害の危機に晒された約170人の住民の便宜に供されています。アル・チベイシュでの本システムの導入は、コミュニティの理解と支援を得て行われました。2007年12月には、ジカール大学湿原研究センターに対し、施設の所有権と管理が譲渡されました。


湿原の復旧・管理

イラク水資源省(MOWR)イラク湿原復旧センター(CRIM)の受託合意を通して、湿原の復旧・管理に向けたパイロットプロジェクトが実施されました。当初アセスメントの実施地区として選ばれた4つの候補地は、バディール・アル・ルメイドウとアル・ジュウェベルの2つに絞られ、詳細なアセスメントとプロジェクトの設計が行われることになりました。CRIMによるフィールドワークにより、水流・水路の復旧に向けた土木工事と葦の再植が行われました。


水質/生物多様性

2005年、水質と生物多様性に関するモニタリングプログラムが6つのパイロット地区で実施され、飲料水供給プロジェクトの実施場所として選ばれたコミュニティの環境に関する基本データの収集と分析を行う一方で、これらの村落に帰還した湿地住民の健康を守るための取組みが進められました。こうした作業は、イラク環境省の受託合意により進められ、2007年4月にはモニタリングのデータが公開されました。


モニタリング、評価

2006年2月から8月にかけて、飲料水供給パイロットプロジェクトのモニタリングと評価が第三者機関によって行われました。モニタリングではポジティブな結果が得られ、非常に困難な状況にも関わらず実施にこぎつけた今回のプロジェクトが「コミュニティにおける信頼醸成に多大な影響をもたらした」と最終報告書は結んでいます。また、今回のプロジェクトは地域住民の生活再建に大きく貢献したことも評価されています。

衛生設備、湿原の復旧に関するパイロットプロジェクトのモニタリング、評価は2007年9月に完了しました。評価結果では総合的なプロジェクトの成功が認められました。このプロジェクトの成果と経験を今後の活動に生かすべく、評価結果がイラク側に提出されました。