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コンポーネント3:能力開発


湿原地帯の持続可能な管理手法を特定し、それを実行に移すためには、意思決定者の能力、コミュニティグループの理解、関係者による支援が必要です。本プロジェクトにおいてはさまざまな能力開発の機会が提供され、同分野の支援を行っています。具体的には、湿原地帯管理の政策・技術的側面に関する10種類の研修コースを行いました。また、政府高官や地元グループの代表を対象にスタディツアーを二度実施し、コミュニティレベルでの取組みや能力向上プログラム、およびESTの適用事例などをじかに検討しました。安全上の理由から、こうした研修コースやスタディツアーは西アジアなど、イラク国外で行われました。また、イラク国内においては2次研修プログラムを実施し、イラク国内の機関に対して支援活動を行ったり、国外で研修を受けた人物を講師または主催者として積極的に活用しました。さらに、研修や支援の提供により、コミュニティグループによる地方レベルの湿原管理諸活動のアセスメントおよび実施能力の向上が図られ、研修を受けたコミュニティグループの提案にそった諸活動が実施されました。

研修コース

持続可能な湿原管理を可能にする分野横断的な対応に必要であると思われる、能力開発の機会をさまざまな分野(政策・制度的側面、技術面での課題、データの管理・分析)において提供しました。

イラク環境省、地方自治公共事業省および水資源省の政府職員、湿原地帯の各コミュニティのメンバー、学者などを含む、270名以上のイラク人が湿原管理の技術・政策・制度的側面に関する研修を受けました。研修の実施にあたっては参加資格が定められ、研修生の選抜作業が行われました。また、研修の修了生がパイロットプロジェクトの実施・管理に直接関わっていくことができるよう、研修生が所属する組織と交渉を行い、合意がなされました。

政策および制度面に関する研修: ESTの適用を含む、適正な湿原の環境管理は、統合水資源管理(IWRM)アプローチを基本としたものでなくてはなりません。イラクの関係当局、コミュニティの意思決定者、およびNGOは、こうしたアプローチ、および今のイラクにおいて統合水資源管理を運用していくために必要な現実的な政策・戦略の策定方法に関しては限定的な理解しか持ち合わせていません。湿原管理に向けた取組みもまた、地域のコミュニティに根差したものでなくてはなりません。こうしたニーズを満たすべく、本プロジェクトでは以下のテーマに関して能力開発を行いました。

1. 統合的水資源管理:施策と統合(2005年4月4-9日、アンマン)

2. 湿原管理(2005年6月19-26日、カイロ)

3. 水質管理(2004年12月6-17日、滋賀)

4. コミュニティレベルの取組み(2005年6月11-16日、アレキサンドリア)

技術研修: 飲料水や衛生設備の供給、湿原における水質管理を目的としたESTオプションの見極め、実施、管理のために、以下の4つの分野における能力開発が必要となりました。

1. 飲料水供給のための環境に適正な技術(EST)(2005年5月16-27日、大阪・滋賀)

2. 持続可能な衛生・排水処理システム(2004年12月6-17日、大阪)

3. 湿原管理のための植物生態応用技術(2004年12月6-16日、カイロ)

4. 環境適正技術(EST)のアセスメント方法(2005年12月1-3日、ダマスカス)

データ管理・分析に関する研修: 湿原情報ネットワーク(MIN)の活用・アップロードに関する研修を行いました。同システムはイラク南部湿原観測システム(IMOS)にリンクしており、再冠水や生態系の変化に関する衛星および遠隔探査データの報告を定期的に行っています。IMOSの運用を推進するため、遠隔探査データ分析に関する研修プログラムを実施しました。

1.  リモートセンシングの利用と湿原アセスメントおよびモニタリングのためのGIS(2005年2月6-10日、アンマン)

2. 湿原情報ネットワーク(MIN)(2005年3月27-31日、アンマン)


研修マニュアル

各研修コースのカリキュラムと教材は、各分野における現在最高レベルの知識を利用すると共に、必要に応じてUNEPその他組織の成果物を活用して開発されました。政策および技術面での研修カリキュラムには「研修指導員の研修」という要素が盛り込まれています。また、研修を受けた専門家がパイロットプロジェクト実施地区において地元のチームやコミュニティの個別のニーズに合わせた研修を実施することができるよう、教材の提供も行っています。10の研修コースに対し、受講生、研修指導員をそれぞれ対象としたハンドブックから成る研修マニュアルを英語、アラビア語の二言語で作成し、その冊子またはCD-ROMをイラクの関係省庁および教育機関に配布しました。この研修教材はホームページからダウンロードすることも可能です。


2005年8月25-31日に東京、滋賀、大阪で行われた公開シンポジウムに合わせて、高官を対象としたスタディツアーが企画され、現在日本で実施されているESTの視察、評価を行うと共に、イラク南部湿原への転用の可能性が検討されました。また、2006年12月に滋賀と大阪で行われたイラク南部湿原の管理に関する国際ワークショップに合わせて、同じく高官を対象としたツアーが企画され、地方レベルでの取組みの視察およびESTの適用例について理解を深めました。


2次研修

2次研修支援の目的は、イラク国内における研修プログラムの現地化、定着を促進することで、多くの市民やコミュニティに湿原管理のオプションに関する教育を行うことを目指しています。本フェーズにおいては、イラク環境省、水資源省、バスラ大学、ジカール大学の協力により、イラク国内で以下の6つの研修コースが企画実施されました。

  1. 統合的水資源管理(IWRM)(2005年12月13-19日、ジカール大学)
  2. コミュニティレベルの取組み(2005年12月21-24日、ジカール大学)
  3. 湿原管理のための植物生態応用技術(2005年12月4-11日、バスラ大学)
  4. 水質管理(2005年12月27日-2006年1月10日、水資源省)
  5. 湿原情報ネットワーク(MIN)(2005年12月4-8日、環境省、バクダッド)
  6. 湿原情報ネットワーク(MIN)(2005年12月18-22日、環境省、ジカール)

イラク国内でも国外での研修と同様の研修が支障なく実施できるように、UNEPでは財政面での支援およびアラビア語と英語による研修教材の提供を行いました。本プロジェクトの一環として先にイラク国外で行われた研修コースの修了生が、こうした国内研修の準備作業や講義を担当しています。第1フェーズでの成功を受け、第2フェーズ以降においてもイラク国内で2次研修が行われています。


コミュニティレベルの取組み

地域コミュニティのNGO(湿原アラブ評議会)の提言に基づき、地域の環境局および州統治評議会とのパートナーシップにより、バスラ、ジカール、ミサーンの3州において以下の湿原管理に関するコミュニティレベルでの取組みが行われています。

  1. バスラ: 「湿原アラブの環境意識向上キャンペーン」として、現在、イラク南部湿原が直面している環境問題に対する啓発を目指した市民集会が10回行われました。
  2. ジカール: ジカールの湿原アラブ評議会は、ジカール環境局との協力により、「湿原環境内における毒物を使用した漁法の危険性に対する意識の向上」に向けた取組みを展開しています。
  3. ミサーン: 「湿原の生態系の重要性に対するミサーンの湿地住民の理解を促進する取組み」として、宗教指導者を対象として湿原環境の重要性に関する5日間の集中コースを行いました。また、若者を対象に同テーマで通常の研修コースを企画実施しました。