About UNEPUNEP OfficesUNEP NewsUNEP PublicationsUNEP CalendarUNEP AwardsUNEP Milestones

イラク政府技術会議とUNEPイラク南部湿原環境管理支援 – 概要報告


パリ(フランス)
2007年4月18-19日


概要

UNEPイラク南部湿原環境管理支援プロジェクトについて協議するために、イラク政府とUNEPの二者間会議が2007年4月18日にUNEPで開催されました。

この会議は以下の目的で開催されました。

  1. イラク側の環境優先課題の検討および事業計画の立案、特に、
    • 実施中のプロジェクトフェーズの進捗状況分析
    • 新しいフェーズに向けた連携の検討および、追加事業が必要と思われる分野と優先課題の特定
  2. ナルミン・オスマン環境大臣とDTIE局長とのハイレベル会合の実施

イラクからはナルミン・オスマン環境大臣を筆頭に、環境省、水資源省、地方自治公共事業省の代表が参加しました。

この会議での、日本政府の資金拠出によるUNEPイラク南部湿原プロジェクトの第Vフェーズの継続が確認され、活動の提案内容に対して参加者が意見を出し合い、本フェーズの立ち上げに備えました。さらに現在進行中の各プロジェクトフェーズ、中でも今後着手・完了する予定の残りの作業について詳細な検討が行われました。また環境省、水資源省、地方自治公共事業省の代表が、イラク南部湿原とその他の様々な優先事項について示しました。

2007年4月19日、ハイレベル会合で環境大臣が明らかにした優先プロジェクトおよび新フェーズについて、技術的議論が続けられました。またイタリア代表団の出席者をまじえ、イタリアの資金援助による活動と協力体制について協議が行われました。


UNEPイラク南部湿原プロジェクト(第Vフェーズ)に対する提言

プロジェクトの第Vフェーズで実施が予定されている活動には、代替エネルギーを利用した水供給のパイロットプロジェクト、水質-湿地管理パイロットプロジェクト、能力開発、コミュニティレベルの取り組み等があります。様々なプロジェクト活動に対して以下の提言が行われました。

  • 飲料水供給の試験的実施: 代替エネルギーについては、プロジェクトのあらゆる試験的局面で維持管理と移譲のための期間を必ず設け、プロジェクトの持続性を確保する。3州の間でパイロット実施地域の公正な分布を確保するために、バスラをパイロットの優先実施州とすることが検討されている。イラク側が適切なコミュニティの選定と推薦作業を開始する。
  • 水質・湿地パイロット: 水質改善と湿地再生のためにメイン・アウトフォール・ドレイン(MOD:Main Outfall Drain)」に沿った人工湿地を実際に利用できるかどうか検討する。この事業は、ユーフラテス川からMODへの下水迂回の是非に関する現在進行中の論議と結びつく可能性がある。このパイロットプロジェクトに環境モニタリングを付け加える。
  • 研修:隣国、例えばトルコやシリアでの国際研修の開催を検討する。研修参加者の選考基準を再確認する。
  • 湿原情報ネットワーク:環境モニタリングを支援し、その結果を湿原情報ネットワーク(MIN)やその他の意見交換の場に提供する。
  • 能力開発のフォローアップ:研修を受けた職員が各機関でどのように活用されているか評価し、さらなる能力活用の場を検討する。

第Vフェーズに対する追加提言には以下の項目がありました。

  • 地域コミュニティにとって効果が実感できる活動を実施する。
  • イタリアのプロジェクトなど、他のドナーによる活動との連携を強化する。
  • 第Vフェーズのプロジェクト・ドキュメントが整い次第、イラク環境省に提出する。(すでに最初の包括的なプロジェクトが承認されているので、イラク国内メカニズムの中で第Vフェーズの承認を再度得る必要があるかどうか環境省が確認する。)

プロジェクト第Tフェーズ、第Uフェーズ−A、第Uフェーズ−Bに関する協議と提言


現在進行中の第Tフェーズ、第Uフェーズ−A,第Uフェーズ−Bについて、今後完了する予定の活動に関する詳細な協議がUNEPとイラク代表団の間で行われました。以下に協議内容と決定事項を要約します。







環境省

UNEPとイラク環境省の協議に基づき、環境省は以下の実行に同意しました。

  • 第Tフェーズ基本合意書の内容を完了する。本合意書に従い4月30日までに活動報告をUNEPに提出、修正合意書に従い2007年5月30日までに会計報告を提出し、第Tフェーズを終了する。
  • 設備機器の修正版リストを付けて湿原情報ネットワーク基本合意書の内容を完了する。その後2-3日以内にUNEPから環境省への移譲覚書に署名する。
  • 環境省の戦略計画を(できれば英語で)UNEPに提出する。
  • 2005年と2006年のイラク環境状況報告をUNEPに提出する。UNEP西アジア地域事務所(ROWA)は研修を通じて各国の環境報告書の改善を支援しているので、報告書の翻訳が可能かどうか検討する。
  • 継続的なモニタリングおよび維持管理の支援提供に伴い、衛生パイロット施設の受け入れを検討する。

UNEPは以下の措置を取ることに同意しました。

  • 各フェーズ終了時に最終活動報告書を作成する。イラク環境省はこの活動報告書をイラク計画省に提出することを希望している。
  • 冊子「よみがえる自然」のアラビア語版を200部、英語版を100部提供、もしくはイラク国内での印刷を検討する。
  • 研修教材等の刊行物を提供する。
  • 第Tフェーズ:1コミュニティに限定して実施している衛生パイロットに関する説明を行う。
  • 第Tフェーズ:人工湿地衛生施設に関して詳細な説明を行う。多くの場所がこの技術の恩恵を受けると考えられ、詳細説明は有益と思われる。
  • 第Uフェーズ−A:湿原情報ネットワーク(MIN)のデータ保存機能に関わる問題を確実に解決する。
  • イラク南部湿原についての「アース・レポート」をイラク環境省に提供できるかどうかBBCに確認する。

地方自治公共事業省

地方自治公共事業省はUNEPと協力して以下の措置を取ることに同意しました。

  • 6ヵ所の給水所のMMPWへの移管を完了する。

水資源省

水資源省はUNEPと協力して以下の活動を完了することに同意しました。

  • 第Tフェーズ基本合意書の修正版概要報告書を2007年4月末までに提出する。

UNEPは以下の措置を取ることに同意しました。

  • 冊子「よみがえる自然」のアラビア語版と英語版のコピーの提供、もしくはイラク国内での印刷を検討する。
  • 研修教材等の刊行物を提供する。

イラク関係機関の優先課題の予備的リスト

会議で以下の優先事項がイラク環境省、水資源省、地方自治公共事業省から示されました。

環境省

  1. クルディスタン水資源管理プロジェクト
  2. 自然遺産 – 生態系管理プロジェクト
  3. 放射能汚染調査
    注:イラク湿原復旧センター(CRIM:Center for Restoration of the Iraqi Marshlands)とイラク科学技術省も同様の調査をすでに実施している。
    注:UNEPのPost Conflict Branch(PCoB)はセルビアでの調査と、機材使用に関する研修を実施した。
  4. 放射能汚染からの回復
  5. 戦争遺物の処理方法の検討
  6. 汚染地域の処理と浄化
  7. 水・排水処理のEST(環境上適正な技術)に関する環境省職員の能力開発
  8. イラクにおける絶滅危惧種の生物学的調査
    注:絶滅危惧種の大半は湿原に生息し、再び見られるようになった種もある。
  9. イラクにおける土地被覆変化の調査(UNEP湿原プロジェクト/第Tフェーズで開発したIMOSツールを拡張し、調査対象範囲を南部湿原から国内全土に拡大する)
  10. 総合的な環境評価
  11. 大気環境と大気汚染のモニタリング
  12. 有害廃棄物管理
  13. カナダの支援による大気汚染モニタリング
  14. イラクに流入する河川の水質モニタリング
    注:ROWAには当時シリアとイラク、クウェートが承諾した、水質に関する過去の報告書がある。
  15. 騒音公害の調査
  16. 湿原における葦工芸品産業の育成
  17. 産業・一般廃棄物交換プロジェクト
  18. 多国間環境会議実施支援(ROWAから環境省に対する提案)

地方自治公共事業省

  1. 歴史的都市復興プロジェクト・伝統的建築物等の保存(サーマッラーおよびモースル)に向けた取り組み方についての研修
  2. 給水パイロットプロジェクト(現状では住民の40%が清浄水を入手できない。)
  3. 省に道路用機材と車両が必要
  4. 支援に向けた都市計画法の策定(UNEP ROWAの提案)

イラク国内での地方自治公共事業省の責任の明確化

  • 都市廃棄物と固形廃棄物
  • 産業廃棄物と有害廃棄物
  • 医療廃棄物は環境省の管轄で対象外

水資源省

  1. 水資源省の2015年度計画は290億米ドル相当の事業を行うもので、再重要課題は水関連インフラ全般の運営・維持管理と灌漑事業の構築・再建。
  2. 国内の灌漑可能な土地1,500万ヘクタールすべてを対象とした土地改良事業。最近の数年はダム建設、中でも約25億米ドルの資金を要するBekhmeダムの建設に重点が置かれていた。
  3. モスール・ダムの安全性が重要課題で、水資源省はダムの決壊事故の発生防止に重点を置き、構造の安全性の強化を図っている。また同省は、リスクの最小化を図り、より優れた運転モードを可能にする新しいグラウチング技術とモデリング機能を採用している。
  4. 水質はイラク河川系の重要な問題であり、イラクには水質モニタリングを整備する国家戦略が必要である。
  5. 技術面:水資源省は政策決定のために最新の管理ツールの採用を予定している。こうしたツールを活用して結果を発表し、効率を改善できるよう、省内の職員に対する支援が必要である。
  6. バスラにおける水供給:1970年代、バスラの飲料水はシャトルアラブ川から取水していたが、1990年代、この川の水は飲用に不適となった。水資源省はバスラ・スウィート・ウォーター運河を建設、その長さは240Kmに及ぶ。日本の資金提供はバスラの上水道整備に大きな役割を果たしている。
  7. 水力発電の問題:多数のダムがあり、国内の必要電力の25%は水力発電で賄うことが可能である。しかし、インフラの劣化により設備能力のわずか35%しか活用されていない。


環境優先課題に関するドナーと国内機関の活動の調整

オスマン環境大臣から、UNEPが湿原地帯での調整役を担いながら他分野に関与しないのは何故かとの質問がありました。UNEPは、環境省が他のドナーとの調整に際し支援を必要とする場合は対応できる可能性があると回答しました。イラク国内の調整に関しては環境省が対処すべきものと考えます。